主役がいない邦画5選 ― 群像劇が描く多彩な人間模様

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東京物語

監督
小津安二郎

主要キャスト

  • 笠智衆
  • 東山千栄子
  • 原節子
  • 杉村春子
  • 山村聡
  • 香川京子

見どころ
日本映画史に燦然と輝く名作でありながら、その物語は驚くほど静かで日常的。本作は、特定の主人公を立てず、地方から上京した老夫婦と、その子どもや家族たち、それぞれの立場を等しく描く群像劇です。小津安二郎監督の代名詞ともいえるローアングルの構図、長回し、静かなカメラワークは、登場人物たちの生活と感情を淡々と映し出します。戦後日本の家族観や価値観の変化を背景に、「家族とは何か」「老いとは何か」を観客に問いかける作品です。特定の人物に視点を固定せず、家族全員の言動や関係性にスポットを当てることで、観客は自分自身の経験や感情を重ね合わせることができます。

あらすじ
広島県尾道市に暮らす老夫婦、周吉(笠智衆)ととみ(東山千栄子)は、東京に住む子どもたちを訪ねるために上京します。息子や娘たちはそれぞれの生活に忙しく、両親をもてなす時間を十分に取れません。そんな中、嫁の紀子(原節子)だけが心を尽くして二人に接します。やがて、子どもたちの都合で両親は熱海への旅行を勧められますが、そこでも孤独感が募ります。尾道に戻った後、とみの体調が急変し、家族は再び集まることになりますが、そこには避けられない別れが待っていました。物語は派手な出来事や衝撃的な展開を避け、静かに時間が流れていく中で、家族それぞれの立場や感情を浮かび上がらせます。

レビュー
『東京物語』は、群像劇としての完成度が非常に高く、どの人物の視点から見ても一本の物語として成立します。小津安二郎の演出は極めて抑制的で、感情の爆発や派手な音楽に頼らず、間や沈黙で感情の深さを表現します。特に、紀子を演じた原節子の柔らかくも芯のある演技は、物語全体を支える大きな存在感を放っています。戦後の高度経済成長期を前に、日本社会が大きく変わっていく中での家族のすれ違い、地方と都市の価値観の差、そして老いと別れの現実が淡々と描かれます。本作は国内外で高く評価され、英国映画協会(BFI)の「史上最高の映画」ランキングでも上位に選ばれ続けています。群像劇という形式を通して、家族それぞれが“主役”であることを実感させ、観る者に深い余韻を残します。

配信中サブスク
(例)U-NEXT、Amazon Prime Video など
※配信状況は時期によって変動します。

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