主役がいない邦画5選 ― 群像劇が描く多彩な人間模様

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スワロウテイル

監督
岩井俊二

主要キャスト

  • Chara(チャラ)
  • 伊藤歩
  • 三上博史
  • 江口洋介
  • 渡部篤郎

見どころ
1990年代の日本映画において、群像劇の代表作として今も語り継がれるのが『スワロウテイル』です。物語の舞台は、円(Yen)を求めて世界中から移民が集まる架空の都市「円都(イェンタウン)」。移民たちは“イェンタウン”と呼ばれ、都市の底辺で必死に生きています。本作の特徴は、特定の主人公がいないこと。複数の登場人物の視点が入り交じり、街そのものがひとつの主役のように描かれます。岩井俊二監督は、ミュージックビデオ的な映像美と、ストリートカルチャーを取り入れた疾走感ある編集で、独自の世界観を構築しました。Charaが演じるグリコの存在感や、伊藤歩が演じる少女アゲハの視点が物語を導きながらも、あくまで全員が対等な立場で描かれる群像劇の形式が貫かれています。

あらすじ
両親を亡くした少女アゲハ(伊藤歩)は、イェンタウンで娼婦をしているグリコ(Chara)に引き取られます。グリコは恋人フェイホン(三上博史)や仲間たちとともに、小さな希望を胸に日々を生きています。ある日、彼らは偶然にも大量の偽札を手に入れ、それをきっかけに運命が大きく変わっていきます。グリコは歌手としてデビューし、アゲハは新たな生活を手に入れますが、その成功は同時に危うさも孕んでいました。偽札の存在は裏社会の人々を引き寄せ、仲間の間にも亀裂を生じさせます。物語はアゲハ、グリコ、フェイホンをはじめとする複数の視点で描かれ、都市に生きる者たちの希望と絶望が交錯します。やがて、円都という街の非情さが、登場人物たちの運命を容赦なくのみ込み、結末へと導いていきます。

レビュー
『スワロウテイル』は、群像劇の魅力と90年代カルチャーのエネルギーが融合した稀有な作品です。特定の人物の成長物語ではなく、街そのものが成長し、衰退していく様を人間模様と重ね合わせて描きます。映像面では、手持ちカメラによるドキュメンタリー的なリアリズムと、色彩コントラストの強いスタイリッシュな画作りが印象的。Charaが歌う劇中歌「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」は大ヒットし、映画の象徴的存在となりました。役者陣の演技も粒ぞろいで、伊藤歩の無垢さ、三上博史の哀愁、江口洋介の飄々とした存在感が群像劇の中で互いに響き合います。本作は日本映画の枠を超えてアジアの移民問題や経済格差も描き込んでおり、時代を超えて観る者に強い印象を残します。ラストは希望と絶望が同居する余韻を残し、観客それぞれが異なる解釈を持ち帰ることになるでしょう。

配信中サブスク
(例)U-NEXT、Amazon Prime Video など
※配信状況は時期によって変動します。

YouTubeで「スワロウテイル 1996 予告 公式 特報 trailer」を検索


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