主役がいない邦画5選 ― 群像劇が描く多彩な人間模様

Uncategorized

パレード

監督
行定勲

主要キャスト

  • 藤原竜也
  • 香里奈
  • 貫地谷しほり
  • 小出恵介
  • 林遣都

見どころ
都会の片隅、同じマンションの一室で共同生活を送る若者たち。互いに干渉せず、ただ淡々と日々が流れていくはずの生活が、ふとしたきっかけから静かに揺らぎ始めます。本作は、そんな「変化の前の静けさ」と「気づいたときには取り返しがつかない状況」に至る過程を、群像劇として描き出します。群像劇特有の多視点構造により、観客は複数の人物の心情を断片的に覗き見し、それらが組み合わさったときに全貌が見えてくる感覚を味わえます。行定勲監督は『世界の中心で、愛をさけぶ』など感情描写に定評がありますが、本作では恋愛や友情を直接描くのではなく、「表面的な平穏の裏側に潜む孤独と違和感」を繊細に掘り下げています。都会生活に漂う孤立感や、他人との距離感を保ちながら暮らす現代人のリアルさも見どころのひとつです。

あらすじ
東京のマンションの一室で暮らすのは、藤原竜也演じる仕事を持つ青年直輝、香里奈演じるイラストレーター未来、貫地谷しほり演じるアルバイトの琴美、小出恵介演じる映像関係の仕事をする良介。彼らはルームシェアという形を取りつつも、お互いの過去や家族、深い内面には踏み込まない“適度な距離”を保っています。そんな生活に、林遣都演じるサトルという無職の青年が加わります。サトルは近所で起きた連続暴行事件に関心を示しつつも、どこか不可解な行動を見せ、周囲の空気を少しずつ変えていきます。小さな違和感や視線の交錯が積み重なり、観客は何か良からぬ予感を抱くようになるでしょう。やがて、それぞれの人物が抱える秘密や心の闇が少しずつ露わになっていき、平穏に見えた日常が崩れ始めます。しかし、誰か一人の視点に収束することなく、複数の物語が並行して進むため、真実は観客の解釈に委ねられます。この多視点構造こそが、本作の大きな特徴です。

レビュー
『パレード』は、直接的な事件描写や劇的な展開ではなく、会話の間や視線の動き、沈黙の長さといった微細な表現で緊張感を醸し出す作品です。群像劇であるため、特定の人物の成長や変化を追う物語とは異なり、観客は常に複数の立場を行き来します。そのため「自分なら誰の視点でこの物語を見たいか」という能動的な観賞体験が求められます。終盤、ある出来事をきっかけに、それまでの何気ないやりとりやシーンが意味を帯びて浮かび上がる構成は秀逸。行定監督は、登場人物の心情を台詞よりも“間”や“空気感”で表現し、観客の想像力を刺激します。ラストは多くを説明せず幕を閉じるため、「もやもやが残る」という意見もありますが、それこそがこの作品の狙いでもあります。観終わったあと、自分なりの“主役”を見つけ出す楽しみが残る映画です。

配信中サブスク
(例)U-NEXT、Amazon Prime Video、Netflix など
※配信状況は時期によって変動します。

YouTubeで「パレード 2010 予告 公式 特報 trailer」を検索


コメント

タイトルとURLをコピーしました