嫌われ松子の一生
監督
中島哲也
主要キャスト
- 中谷美紀
- 瑛太
- 伊勢谷友介
- 香川照之
- 柴咲コウ
見どころ
一見すれば絵本のような明るさとカラフルな映像美だが、物語の根底には孤独と絶望が横たわっている。観客は、明るい音楽やビビッドな色彩に騙されそうになりながらも、松子が繰り返し転落していく様を直視することになる。彼女の人生は、家族との断絶、愛情の欠如、男性への依存、社会的挫折など、現代日本社会の闇を映し出す鏡だ。カメラワークやカット割りのテンポの速さも特徴的で、観客を物語の渦へと巻き込みながら、悲劇的結末へと導く。
あらすじ
物語は松子の甥が荒れ果てた部屋で彼女の遺体を発見する場面から始まる。遡ること数十年、中学教師だった松子は、同僚をかばったことがきっかけで解雇される。その後、愛を求めてさまざまな男性と関係を持つが、裏切りや暴力、金銭問題が次々と降りかかる。やがて彼女は水商売や風俗、詐欺に関与する生活へと追い込まれ、刑務所にまで入ることに。社会に居場所を見つけられないまま、孤独と貧困に蝕まれ、最期は誰にも看取られずに亡くなってしまう。
レビュー
この映画の最大の特徴は、悲劇をカラフルでポップな映像に包み込む残酷さだ。観客は松子の転落に対して、哀れみと苛立ち、時に嫌悪を同時に抱く。彼女の選択は多くの場合自己破滅的であり、その理由が幼少期からの愛情不足や承認欲求にあることが示されるが、それでも救いが訪れることはない。鑑賞後、胸に残るのは「どうしてこうなったのか」という虚無感と、彼女の人生を笑い飛ばすことの残酷さだ。
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