監督
西川美和
主要キャスト
オダギリジョー、香川照之、新井浩文、伊武雅刀
見どころとテーマ
『ゆれる』は、兄弟の複雑な感情と家族関係を軸に、人間の弱さと揺らぎを描いた心理ドラマです。東京で自由気ままに暮らす弟・猛(オダギリジョー)と、地元で家業を支える真面目な兄・稔(香川照之)。兄弟が再会したことで生じる微妙な距離感や劣等感、嫉妬が物語を駆動します。香川照之演じる兄は、一見穏やかで真面目な人物ですが、その奥には抑え込んできた感情が渦巻き、事件をきっかけに表出します。彼の存在は「脇役」という位置付けを超え、物語全体のトーンを支配するほどの重みを持ち、観客に強い印象を残します。
あらすじ
母の一周忌で故郷に戻った猛は、久々に兄・稔と再会する。二人は幼なじみの智恵子(真木よう子)と共に地元の渓谷へ出かけるが、そこで智恵子が吊り橋から転落する事件が発生。事故か、それとも故意か。現場に居合わせた猛は、兄の証言に疑念を抱きつつも、家族の関係や自身の立場との間で揺れる。裁判が進む中、兄弟の間に積もってきた感情の澱が浮かび上がり、それぞれが心の奥底に抱えてきた思いが露わになっていく。
レビュー
西川美和監督は、日常の一瞬に潜む緊張感を巧みに切り取り、観客を心理的な密室へと誘います。香川照之は、兄としての責任感と人間的な弱さを絶妙にバランスさせ、微妙な表情や視線の動きだけで人物の内面を語ります。オダギリジョーは弟としての自由さと無責任さを漂わせつつ、兄との関係の中で揺れる心を繊細に表現。裁判や取り調べの場面では、兄弟の立場や言葉の選び方が変化していく過程が緻密に描かれ、観客はその変化を敏感に感じ取ります。脇役としての稔は、物語を補強する存在ではなく、弟の視点を揺さぶり続ける「物語のもう一つの柱」。その結果、観客は登場人物たちを単純に善悪で裁くことができなくなります。余韻の長い心理劇として、日本映画の中でも屈指の完成度を誇ります。
配信中のサブスク
U-NEXT、Amazon Prime Video
公式予告リンク
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『アウトレイジ』(2010)
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