監督:森崎東
主要キャスト:森繁久彌、堺正章、栗原小巻、加藤嘉
見どころとテーマ
実在の宮内省大膳寮厨司長・秋山徳蔵をモデルにした、事実をもとに描かれた感動の人間ドラマです。明治から昭和にかけて、宮廷料理の頂点に立った男の情熱と波乱万丈の人生を描き、料理を通じて日本と西洋の文化交流や歴史の変遷を映し出します。主人公が持つ「最高の料理を陛下に献上する」という信念は、単なる職人魂にとどまらず、日本の食文化の発展に寄与した功績として描かれます。料理シーンのリアリティと、厨房を戦場のように描く緊張感が見どころです。
あらすじ
福井の貧しい家庭に生まれた主人公は、料理人としての道を志し上京。西洋料理の修業を積む中で、数々の挫折と出会いを経験し、やがて宮内省に採用される。そこから彼は料理の腕を磨き続け、やがて天皇の食卓を任される「料理番」としての地位を確立する。しかし、その道のりは決して順風満帆ではなく、時代の変化、戦争、宮中の規律との葛藤、仲間との確執など、多くの試練に直面する。料理に全てを捧げた男の生き様が、時に笑いを交えながらも力強く描かれる。
レビュー
森崎東監督は、料理を単なる美味しそうな映像ではなく、文化と歴史を背負った「生きた芸術」として描き出します。堺正章演じる若き日の主人公は、情熱と負けん気に溢れた姿が魅力的で、成長とともに人間的深みを増していく過程が説得力を持って描かれています。森繁久彌は老練な料理長役で存在感を放ち、主人公を導く師としての温かさと厳しさを見事に表現。
料理シーンは実際の調理手順に忠実で、包丁さばきや火加減、盛り付けまで細かく描写されており、食への情熱が映像から伝わってきます。また、戦時下での食糧難や宮中行事の裏側といった史実要素も丁寧に盛り込み、エンタメ性と資料性を両立。観終わった後には、料理という行為が持つ文化的価値と、人の心を動かす力を改めて感じさせてくれます。
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